椅子上生活

主に椅子の上にいます

眠れない夜に思う、(元)行きつけのパン屋のお姉さんのこと

寝ようとしたところでふいに行きつけのパン屋さんでよくしてもらっていた女性が亡くなったらしいという事実を思い出し、悲しくて受け入れられなくて寝れないので記録としてまとめておきます。


※この記事を書いた翌日に大変なことになったので、最後に追記をしています。



そのお店は、菓子パンから惣菜パンまで種類豊富なかわいいパン屋さん。
いつも4人くらいのスタッフさんが厨房と店内を忙しく行き交う、賑やかなお店です。


長男の保育園のすぐ近くのそのお店で、いつも遅めのお迎えだったわたしは、帰って夕飯を作るまでにお腹が空くだろう長男のために、よく菓子パンを買ってから帰るのが日課でした。
保育園が楽しくて帰りにぐずる長男の説得材料としても「パン屋さんに寄って帰ろう!」は魔法の言葉でした。
息子のお気に入りは、甘い「おいものパン」。

このお店のパンは気取っていなくて食べやすくて、どれを買っても美味しい、お気に入りのお店でした。


そんな出現頻度の高いわたしたち親子はすっかり覚えられ、毎日話しかけてもらっては息子ともどもかわいがってもらっていました。
明るくて笑顔の素敵な、わたしより少しお姉さんな女性。


ある年の息子の誕生日には大好きなライダーのハンカチのプレゼントまでいただいてしまい、その後、息子と一緒にお礼の手紙を書いたりしました。
ただの常連客にそこまでしていただけるのか!?いや、うちは特別ってことなのか?とフワフワ嬉しくなったりもしました。


保育園卒園後は、通勤路から外れてしまったこと、同じタイミングでパン屋さんの閉店時間が短くなったのもあって足が遠のいたけれど、たまに家族で出かけては、お姉さんに挨拶しつつモリモリ購入して、みんなでおいしいおいしいとパンを食べていました。


その後はわたしの仕事の休み曜日とパン屋さんの定休日が同じのため、ここ数年はたまにしか行けなくなっていたけど、たまに行くと声をかけてもらって「長男くん元気?」などと会話しては盛り上がっていました。


「お店のスタッフと元常連客」なだけの仲だったけど、10年以上顔見知りで、店に寄ると必ず声をかけてもらえて、結婚で知らない地に来て友人のいなかったわたしには大切な人だったなと今になって思います。




そのお店のLINEである日、「母が亡くなったのでしばらくお休みします」とメッセージが送られてきました。


お店のおばあちゃんが亡くなったのかなと思ったけど、そういえば数年前に「息子がこの店で働き始めた」というお話を聞いていたのでした。


なんだか心がザワザワして、その後お店が再開して何度か行ったけど、いつ行ってもお店に立っているあの人がいなかった。



実は、いつ行っても店頭に居るから、働きすぎじゃない?とは思っていました。


元々お父さんがパン職人として働くお店で、娘であるその人も店頭に立っているのだと、長男が保育園を卒園した後、地元の情報誌に掲載された記事を見て知りました。

お店もスタッフさんを雇ってはいるけど、家族経営的なところがあって、いわば「経営側」のあの人は、あまり休まず働いていたのかもしれない。


その働きすぎが原因かどうかは分からないけど、悲しい。もう会えないのが寂しい。


いつどうして亡くなったのか、本当に亡くなったのか、お名前も苗字しか知らない、何も知らない間柄だし、他のスタッフさんとは親しくもないので聞けないのだけれど、いつも居たあの人がいない。



だってわたしより少し上くらいの、息子さんもおそらくハタチそこそこの、まだまだ若い人だったじゃない。


いつお葬式をしたのかも知らなかったし、今さらお線香をあげに行くほどの仲でも無い。



行き場がない思いだ。



ということをお布団の中で思い出して寝れない。



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翌日、ここに書いてなんとか気持ちに整理もついたしと、最近足が遠のいていたそのパン屋さんに行くことにした。


子供達も誘ってみたけど、腰を上げないので一人でパン屋さんへ。


店内に入り、見回してもやっぱりあのお姉さんはいない。


いつもの長男のお気に入りの「おいものパン」、名物のクリームパン、わたしのお気に入りのコロッケサンドと素朴で美味しいレーズンクッキーなどなど、モリモリ買ってレジでお会計を済ませたところで、
「もぐなおさん?」と呼ばれ顔を上げると、そこにその人がいた。


はい、居ました。

お姉さん生きてた!w


勝手に死なせてごめん、ていうかもう居ないのかな、とメソメソ大公開した翌日にやっと会えるなんて、そんなことある??


びっくりしすぎて、なんだか申し訳なくて、嬉しくて、泣きそうだったけど、いつも通り「長男くん元気?」と声をかけられて、「元気です!もう中2ですよー」「あー、もうお買い物についてきてくれない年よねー」と他愛ない会話をして、ニヤニヤニコニコ、次は早めに来なきゃ、子供達も連れて、と心に決めて、ウキウキと帰りました。



さて、もう感謝も伝えられないかもと思っていた人にまた会えたので、今後きちんと連絡を取りたいな。どうしよう。


こんなこと考えてたなんて恥ずかしくて申し訳なくて言えないけど、でもあの頃からのありがとうの気持ちを、今度手紙にでも書いて渡してみようかな。