椅子上生活

主に椅子の上にいます

石子と羽男2話の優しさに泣いた話

今季、そんなに期待せず見たTBS金曜ドラマ「石子と羽男」。


しかし制作陣が「MIU404」や「最愛」と同じく演出の塚原あゆ子さん・新井順子プロデューサーコンビに、脚本はタイバニの西田征史さんということで、見てみたら納得の出来でした。


「石子と羽男」はいわゆる弁護士もの。
現在3話まで放送されていて、ストーリーのきっかけからどんどん転がっていくお話や、自然な流れで説明される小難しい用語や法律の知識、さりげなく察することのできる人物背景の演出、ダレない飽きない展開などなど、さすがの面白さ。


1話で、赤楚くんの持つ絶対的正義っぽさがすごいなーと思ったけど(仮面ライダービルドを見ていた贔屓目だろうか…)、子を持つ親として、2話について語りたい。


<以下ネタバレあります!見てない方はParaviでどうぞ!>




Paravi 石子と羽男-そんなコトで訴えます?- 事案02 未成年者取消権





2話のタイトルは「未成年者取消権」。


未成年の子どもが親の同意なしにゲームなどに課金したり、契約をした場合には、取り消せるよー的な法律です。

作中でちゃんと「子どもだからってチャラにするのはどうか」、という一般感情への反論もおさえつつ、取り消せない場合もあるというパターンを提示する、模倣されないよう視聴者に対する牽制をうまくストーリーと絡めながら進行します。


登場人物はコウタくんとママ。

母子2人家庭の子供・コウタくん。いい学校に進学してママに楽をさせてあげたいということで、中学受験のため塾に通う小学生。
その塾通いのために持たせたスマホで、受験が嫌で塾をやめたくてゲームに熱中し課金してしまった…という導入。


ママは典型的教育ママな描かれ方で、まーた木村佳乃にこういう役やらせてー、と思ったけど、、、?


話が進むにつれて、色々と別の容疑が出てきたり、登場人物の側面が分かってきます。



パスワードを盗まれたりアカウント乗っ取りやら、思わぬ方向へ話が転がりつつ、硝子(有村架純)は親子・そしてママへの印象を少しずつ変化させていきます。


母親はステレオタイプの教育ママではなく、ダブルワークで教育費を稼ぐ働き者。


家で一人でご飯を食べる寂しいコウタくん…ではなく、今風に、母が料理を作る動画をYouTuberのようにカメラに語りかけながら撮影し、それを見ながら食べる、1人でも独りではない、温かい親子の関わりがあった。


そしてダブルワークで疲れている母を気遣って、お金のかかる塾を辞めたいと思い、そしてそのきっかけになるゲーム課金のお金も、未成年なら返金されるということも分かってやった。(かしこい)


それを知っては、悪いこととわかってやったなら無いことにはできないと、経済的に苦しい中でも、親子で全額支払う決意をするママ。(まとも!)


働きすぎのママが心配だけど、塾は辞めないで受験をがんばりたいという気持ちを素直に言えたコウタ。


母子家庭には、受けられる公的援助があるよと教えてくれる石子。




もう、もう、本当に、この流れの優しさに泣いてしまった。


うちは中学受験はしていないんだけど、世間からのいわゆる「教育ママ」というものに向けられる視線や、中学受験をする子供全般に向けられる「かわいそう」という目線、そういうの全部に対して、今必死に現実でがんばっている人にエールを送るような内容だと思いました。


今まさにがんばっている人たちに、優しい目線。


そりゃ子どもだって強制されて嫌々通ってる子もいるだろうし、自分で受験を決めた子でももっと遊びたい子だっているし、親も本人もガチ勢な子もいるし、そしてがんばる子供を応援したいと、生活を工夫しながらがんばる親もいる。


そんな人たちを包み込むような…「それでいいよ!がんばってるね!応援してるよ!」というような内容のお話で、これは映画にも到達できない、ドラマにしかできないことだなぁと思いました。*1


映画で1テーマだけ描く場合、そのテーマに興味がない人はそもそも見ないから、教育ママに偏見を持っている人はそのままだけど、そういう人も見る可能性がある・見た人の世界を変えられるかもしれない、このリーチの広さが連ドラの良さなんだよなあ、と思ったのです。

MIU404やアンナチュラルの時も、エンタメで少しでも世の中を良くしたいという気持ちが伝わってきたんだけど、その変わらない塚原組のまっすぐさにジーンときました。
取り上げてくれてありがとうございます。


SNSを通してではあるけれど、同年代の子を持つ親としての友人たちの苦労や苦悩、子どもたちの成長や挫折を見てきたので、なんだか泣けてきて…。そのがんばったみんなが報われたような、認めてもらえたような気がして涙が出ました。



それから「親ガチャ」という言葉についても。

たしかに、人生、スタートラインで差がついているのは否めませんよね。


しかも本物のガチャガチャは不良品だった場合「追完請求権」で交換できますが、
親ガチャに関しては不良品だと思ったとしても、交換を命ずる法律はありません。


でもだからって生まれ落ちた環境を受け入れるしかないとは思いません。
ひどい親が存在するのは事実ですから。


そういう場合は、ぜひ声を上げていただきたい。


でも、多くの親は、がんばって親をしていると思うんです。


<孝多ー。今日のご飯は…>


<木槌の音>


多くの子供も、期待に応えようとがんばって子供をしています。


そういう親子の関係を、当たりだハズレだっていうのは、何の意味があるんだろう。


以上です。


――「石子と羽男」 2話より


ひどい親はいる。出自の差は誰にもあるけど、それでも懸命に生きる人を、他人が当たりだハズレだと言うことへの違和感。


ひどい親の時は声を上げていい。

そして自分の人生は親だけでは決まらない。変えられるという強いメッセージ。


今を懸命に生きるすべての親子へのエールのようで、ああーー、泣いちゃうんだよおーー(ToT)



正直、今の中学受験関連の費用は高すぎてシングルには普通には払えない額だとか、高校からいい学校には入れない、中高一貫校が多い都会の仕組みとか、それらのせいもあって子供にかかるプレッシャーとか、現実には他にも色々暗い背景もあるんだけど。



がんばってても「親のせい」「毒親」「しつけがなってない」「子供がかわいそう」などなどなど…と言われがちな現代の親、そして子供たちに、「がんばってるね!知ってるよ!」と声をかけてもらったような、温かい気持ちになりました。


なかなか無いんです。親同士は言い合って励まし合ってるけどね。




ということで、ありがとうの気持ちを放出したくて書きました!



以上です。(石子さん風)



*1:最近、「二月の勝者」など中学受験もののドラマが多数ありましたが、すみません、見てないので比較はしておりません…。 自分の家庭環境に年代が近すぎると、見るのがちょっと怖いなーという思いがあり…。 「コウノドリ」も出産後に見れてよかったー、妊娠中だとひたすら怯えてたかも。